シンクタンクとコンサルティングファームの違いとは?業務内容や年収、各社の特徴を解説
Post Date:
2023-08-02 / Update-date:
2024-11-29 /
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サービス別特集
コンサルティング転職のご支援をしていると次のようなご質問を受けることがしばしばあります。
「シンクタンクにも興味があるのですが、コンサルティングファームとの違いはなんですか?」
確かに一見すると似ている2つの業種ですが、さまざまな側面において両者には大きな違いがあります。さらに言えばひとことに「シンクタンク」といってもいくつかの種類があり、組織によって目的や領域が大きく異なります。コンサルティング業界で耳にする「シンクタンク」というのは基本的には民間シンクタンクのことですが、その中でもいくつか分類があります。
本記事ではシンクタンクとコンサルティングファームの違いに着目しながら、シンクタンクとはどのようなものであるのかをご紹介していきます。
- 1.シンクタンクとは
- 2.シンクタンクとコンサルティングファームの役割の違い
- 3.国内におけるシンクタンク
- 4.シンクタンクとコンサルティングファームのビジネスモデル
- 5.シンクタンクがコンサルティングを行うようになった経緯
- 6.シンクタンク系コンサルティングファームの特徴は?
- 7.シンクタンクとコンサルティングファームの働き方の違い
- 8.シンクタンクとコンサルティングファームの年収の違い
- 9.シンクタンクとコンサルティングファームの評価・採用制度の違い
- 10.シンクタンクに向いている方
- 11.まとめ
1.シンクタンクとは
シンクタンクとは、政治・経済・社会といった諸分野に関する政策立案・提言を行う公共の研究機関です。
シンクタンクの始まりは、「社会改良運動」を目指して1884年にイギリスで設立されたフェビアン協会、1910年のアメリカ最古のシンクタンクカーネギー協会(カーネギー基金の前身)、「米国型リベラル思想」に基づき1916年に設立されたブルッキングズ研究所などであるとされています。
シンクタンクにも政府系シンクタンクと民間シンクタンクの2種類があり、さらに母体とする領域によってもさらに細分化されます。
2.シンクタンクとコンサルティングファームの役割の違い
シンクタンクとコンサルティングファームは以下のように大別できます。
シンクタンク
政治・経済・社会などに関する各分野の専門家が集まり、さまざまな調査や研究を行います。また研究結果もとに国や地方自治体の政策に対する提言も行います。
コンサルティングファーム
クライアントとなる企業の経営をサポートするのが一番の役割となります。その企業の目標設定やそこに向けた戦略策定、課題解決に至るまで多方面からサポートします。
こうした役割の違いから、提供するサービスも大きく異なります。シンクタンクにおいては研究内容や調査・分析した結果をレポートとしてまとめることがゴールである場合が多くなります。国や地方自治体に対して提言はしますが、実際に実施するまでのサポートは原則行いません。一方のコンサルティングファームでは企業がどうすれば成長するか、成功するかということが重要になります。そのため考えた戦略を実施するところのサポートまでが非常に重要になります。
但し、昨今の日本国内においては、国や地方自治体のための調査に留まらず一般企業向けにコンサルティング業務を行うシンクタンクも多くあります。その場合、上述のようなシンクタンクとしての役割は部分的である場合が多く、むしろコンサルティングファーム案件が主であること場合もあります。
クライアントの担当部門の違い
シンクタンクが請け負うプロジェクトは、クライアント企業の中である程度方針の定まったものであるため、特定部門や、特定部署からの依頼が多いです。
一方のコンサルタントは、特に戦略領域ですと、クライアント企業の経営層レベルと仕事をすることが多く、テーマも多岐に渡ります。
コンサルティングテーマの違い
シンクタンクは研究機関という性質上、扱うコンサルティングテーマに関しても、ある事柄に関する調査やデータ収集といった、ある程度決まったものが多いのが特徴です。
一方のコンサルタントは、企業や部門の経営課題に対してどう解決していくかという戦略/実行を考えるところにこそ強みがあり、扱うテーマも決まった形ではありません。
求められるスキルの違い
シンクタンクは研究機関だけあって、その強みは専門性と客観性です。特定の分野に関する深い知見と調査力、誰が見ても納得できる客観的なデータ、報告を作成する力が重要であり、これらが主に求められるスキルです。
コンサルタントの場合、クライアントの業績向上が至上命題ですから、それを達成するための、既存の枠組みにとらわれない発想力、クライアントを納得させるに足る論理的思考力、プロジェクトをまとめる管理力やコミュニケーション力といったものが求められます。
3.国内におけるシンクタンク
日本のシンクタンク業界にはどのような分類があるのでしょうか。大きく分けて「政府系シンクタンク」と「民間シンクタンク」の2種類が存在します。
政府系シンクタンク
政府系シンクタンクとは、社会問題や政治戦略などの特定の分野に関する調査を行い国や地方自治体に対して政策を提言する組織です。政府系シンクタンクは非営利団体となります。
民間シンクタンク
民間シンクタンクとは「シンクタンクの業務も行うコンサルティングファーム」という認識に近くなります。民間シンクタンクにおける主な依頼主は一般企業になります。もちろん政府や地方自治体の依頼で調査・分析をおこない提言する場合もありますが、大部分は企業のサポートになります。コンサルティングファームと比べた際の強みは、やはりリサーチ力という部分です。民間シンクタンクには以下のような領域が存在します。
金融機関系
(例)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
日本総合研究所
みずほ総合研究所
証券会社系
(例)
野村総合研究所
大和総研
保険会社系
(例)
損保ジャパン総合研究所
第一生命経済研究所
企業系
(例)
三菱総合研究所
NTTデータ経営研究所
4.シンクタンクとコンサルティングファームのビジネスモデル
シンクタンクのビジネスモデル
シンクタンクの主なクライアントは官公庁であり、受注した案件に関する調査レポートを提出して、代わりに契約金を受け取るというビジネスモデルです。したがって商材は調査報告資料(情報)であり、契約金は案件単位となります。
これに加えて民間企業に対するコンサルティングも行っているシンクタンクの場合、コンサルティングファームのビジネスモデルが適用されます。
コンサルティングファームのビジネスモデル
コンサルティングファームのクライアントは主には民間企業であり、コンサルティングサービスを提供する代わりに契約金を受け取ります。商材は人であり、契約金は「割いた人員数」×「かけた時間」、つまり人月商売での単価設定がベースとなります。
5.シンクタンクがコンサルティングを行うようになった経緯
1960年代後半、高度経済成長期の陰りとともに様々な社会問題が発生し、「行政以外に政策提言や政策研究をできる期間」が必要とされ、シンクタンクが誕生することになります。具体的には、1965年の野村総合研究所、1970年の三菱総合研究所等です。はじめは民間企業をクライアントの中心としたシンクタンクがメインでした。しかしながら1973年のオイルショックを機に日本経済は不況に陥り、民間企業を中心としたシンクタンクは下火となり、官公庁への依存度が高まります。
その後も1度シンクタンク設立ブームが訪れますが(1980年代後半)、1990年代はじめのバブル崩壊により、シンクタンクはこれまでよりも経営の安定化を必要とされます。1度は官公庁への依存度が高まったシンクタンクでしたが、経営の安定化という目的を果たすべく始まったのが、民間シンクタンクを中心とした「シンクタンクのコンサルティング」という流れになります。代表的なものは野村総合研究所等です。
6.シンクタンク系コンサルティングファームの特徴は?
一般的なコンサルティングと比較しての一番の特徴は「高い調査力(および資料作成力)」です。シンクタンクの性質上、専門性の高い分野に対してもリサーチに強みを持ち、客観的にも納得のできる資料を作成する力に長けています。
また、もう一つの特徴として、シンクタンクの多くは金融系(銀行・証券など)グループに属しているため、一般的なコンサルティングファームと比較して金融業界に関するコンサルティングに関して強みがあると言えます。
この2点が大きな特徴と言えるでしょう。
7.シンクタンクとコンサルティングファームの働き方の違い
シンクタンクとコンサルティングファームではいくつかの面で働き方が異なります。コンサルティング業務を行うシンクタンクでも、その働き方はコンサルティングファームと同じとは言えません。
キャリア・働き方
シンクタンクでは中長期的な雇用を想定して採用する場合が多いです。そのため求められる人材も1つの会社で長く働ける人ということになります。また年収に関しても、会社によりますが年功序列に近くなっているところもあるようです。対するコンサルティングファームは完全実力主義である場合が多く、人の入れ替わりも頻繁に行われます。着実にコンサルタントとして経験を積んでいきたい方はシンクタンク、実力主義の中で自身の能力を試ながらキャリアアップして行きたい方はコンサルティングファームを選ぶというのも良いかもしれません。
とはいえ昨今ではコンサル業界でも働き方改革などが特に重要視され、働きやすさは増してきています。コンサルティングファームファームの働き方改革に関しては以下の記事をご覧ください。
▶コンサルティングファームにおける働き方改革|長時間労働是正への取組み
扱うテーマ・得られる経験
(※ここで触れる「シンクタンク」は主に政府系シンクタンクを指します。上述の通り、民間系シンクタンクは企業単位のコンサルティング案件を実施しているためです。)
コンサルティングファームにおける案件は企業単位が中心ですが、シンクタンクが扱う案件は社会問題やインフラ開発といった大きなテーマになります。そのためそれぞれ得られる経験が異なります。コンサルティングファームにおいては課題解決のためのアプローチ方法や民間企業との仕事の進め方が身につくのに対し、シンクタンクでは大規模なテーマや先進的な領域に対する調査方法、レポートのまとめ方などが身につきます。
8.シンクタンクとコンサルティングファームの年収の違い
一般に、シンクタンクよりもコンサルティングファームの方が年収は高いです。
シンクタンクにも、コンサルティングファーム同様にコンサルタント(シニアコンサルタント)、マネージャーといった役職があります。コンサルタントクラスであれば年収に大差はありませんが、役職が上がるにつれ、シンクタンクよりもコンサルティングファームの年収の方が高くなっていきます。差は数十万円から100万円、それ以上になるケースもあります。共同経営者クラスですと数百万から1000万円程度の開きがある場合もあります。
また、大手と小規模のシンクタンクにも当然ながら大きな差があり、大手シンクタンクの平均年収は1000万円前後ともいわれています(企業によって差があります)。
9.シンクタンクとコンサルティングファームの評価・採用制度の違い
シンクタンクはコンサルティングファームに比べると、社員のキャリアを中・長期で考えており、長く会社に留まって働いてくれる人材を欲する傾向があります。したがってコンサルティングファームよりも年功序列寄りと言えます(あくまで「年功序列寄り」であり、当然ですが働きぶりは正当に評価されますし、同じ年齢でも活躍すれば年収やポジションなども異なってきます)。
コンサルティングファームはご存知の方も多いと思いますが、実力主義の部分が大きく、実力によって年収・ポジションは大きく変わります(とはいえ研修制度や福利厚生など昨今では多くのファームが力を入れています)。
一つの会社で着実に成長を望まれる方には、シンクタンクの考え方・雰囲気は合っているといえるかもしれません。
10.シンクタンクに向いている方
シンクタンクに向いている方とはどのような方でしょうか。これまでのご説明にもあるように、シンクタンクではリサーチが主な業務内容になります。そのため以下のような人が向いていると考えられます。
・専門性の高い方
・同領域で長く働かれたい方
専門性が高い方というのは、つまり1つの領域をずっと研究することができる方のことです。シンクタンクというのは各分野の専門家が集まって社会に関する大きなテーマを調べる場所であるため、自分がある分野に関して専門的である、知見があるというのは役割を持つうえで非常に重要なことになります。
2つ目は、シンクタンクでは中長期で働くことを前提としている場合が多いためです。また専門性が大事な仕事であるため、次々にテーマを変えずに1つのことをじっくりと調査できる人の方が向いていると考えられます。
コンサルタント(戦略)に向いている人に関しましては、以下の記事に詳しく掲載しております。ぜひ併せてご覧ください。
11.まとめ
ここまでシンクタンクについてコンサルティングファームと対比してご紹介してきました。シンクタンクとコンサルティングファームの境界は一見曖昧ですが、仕事の内容やキャリアに対する考え方などそれぞれに特徴があります。
世の中に対するリサーチ・分析業務を行いたい方はもちろん、「コンサルティング業務には興味があるけれど、特に特定領域の専門性を高めたい、じっくり腰を据えて同テーマに取り組みたい」という方も、民間シンクタンクという選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。
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