コンサルティングファームにおけるデータサイエンティストの役割
Post Date:
2020-02-19 / Update-date:
2021-05-26 /
Category:
IT・デジタルコンサル特集
IoTデバイスの普及や、機械学習の進歩でデータの流通量が増加し、2010年から2020年の間で40倍になる予定です。2025年には世界のデータのうちおよそ30%がリアルタイムデータになるとも考えられています。
こうした中で、企業は膨大な中から特に必要なデータを収集/分析し、かつビジネスにおいてその結果を活用に繋げられる人材を求めています。その職種の1つが「データサイエンティスト」です。
本記事ではデータサイエンティストとはどのような職種なのか、コンサルティングファームにおいてどのような役割を果たすのか解説していきたいと思います。
- データサイエンティストとは
- データサイエンティストの種類
- コンサルティングファームにおけるデータサイエンティスト
- データサイエンティストの採用状況
- データサイエンティストとしてコンサルに転職するには
- データサイエンティストの年収を上げるには?
- まとめ
データサイエンティストとは
概要
データサイエンティストは収集したデータを分析し、経営課題に対してビジネス視点での提言を行います。データ分析を行う職種は他にも多くありますが、データサイエンティストの大きな目的は経営課題の解決にあります。そのため、データ分析にかかわる知識だけでなく、ビジネスの知識も必要となります。
データサイエンティストの仕事の流れ
先ほども申し上げた通り、データサイエンティストはビジネス視点での提言も行います。ここではその具体的手順を見ていきたいと思います。
①仮説を立てる
まず解決すべき経営課題を把握し、課題を解決するためにどうするべきかという仮説を立案します。
ここで最初に行うのは、ビジネスゴールを達成するためにどういう手段をとるべきかを明確化し、洗い出した課題に優先順位を付けることです。次にターゲットとする課題、達成目標を明確化します。そうして分析依頼者と分析者との間で課題と達成目標の認識を合わせます。これがプロジェクトの最初のヤマ場であり、ここでプロジェクトの成否が決まると言っても過言ではありません。
②データ活用方法の設計
次に立案した仮説を立証可能なデータを収集・加工し、データ活用方法を設計します。
実際には、集めたデータから意味のある情報を取り出すために、“雑音”となるデータを取り除く作業(データ・クレンジング)がこのプロセスではかなりの割合を占めます。
③データ分析及び課題解決策の提言
続いて多角的にデータの組み合わせを試行し、仮説を統計学的に検証、最終的には課題に対する施策と期待できる成果を提示し、結論、方針の意思決定につなげていきます。
④分析アルゴリズムの提供
プロジェクトの範囲には拠りますが、データを定期的に分析/その精度を高めていくためにアルゴリズム自体をクライアントのソフトウェアやハードウェアに組み込むところまで提供する案件も有ります。
ここまでが基本的なデータサイエンティストの業務の流れです。
データサイエンティストの種類
データサイエンティストにはデータアナリストと機械学習エンジニアという2種類が存在すると考えることができます。ここではこの2つについて詳しく見ていきます。
機械学習エンジニア
AIに関連する職業の中でも特に機械学習の実装や開発に関わる技術職のことをいいます。機械学習とは、コンピューターに命令やデータを与えて学習させ、知能を向上させる技術です。ここで、機械学習エンジニアの仕事をより理解するために、「機械学習」と「AI(人工知能)」の関係について確認しましょう。
AIとは、コンピューターを使って学習・推論・判断など人間の知能の働きを人口的に実現しようとする試み・技術のことです。機械学習、は上記のようにデータから学習し進化していくものであり、AIという広義の概念の一部であるという事ができます。
機械学習エンジニアは、AIに解析させるデータの特徴を読み解きながら、目的に応じた機械学習のアルゴリズムを採用し、解析結果の評価や調整を繰り返します。これにより、未知のデータに関してもアルゴリズムを適用することが可能になります。モデルやアルゴリズムに関わる仕事のほか、AIが作動するシステムの構築・設計や、データの前処理・クレンジングなど、機械学習エンジニアはAI関連の業務全般の統括をします。
データアナリスト
統計学・機械学習を駆使してデータを分析、活用し、事業の意思決定を支援する職種です。ビッグデータと呼ばれる売上データや顧客データ、更にはSNSの書き込みデータなど多種多様なデータを扱います。膨大な量のデータを扱うので、対象データの重要性を素早く見極め無駄なデータを省く能力や、正しい因果関係や論理に基づきデータを分類できる論理的思考が求められます。事業の企画や設計といったものに直接関与するため、依頼者のニーズを深く理解し、密にコミュニケーションをとる必要があります。
コンサルティングファームにおけるデータサイエンティスト
データサイエンティストの需要
コンサルティングファームにおいて近年データサイエンティストの需要が高まっています。これはデータ量の増大で、ビジネスとデータが切っても切れない関係になりつつあるためです。データをいかにビジネスに活かせられるか、のみならず、そもそもの顧客接点やビジネスモデルをどう変えられるかまで、昇華する形も有ります。
データサイエンティストの働き方
コンサルティングファームにおけるデータサイエンティストは基本的にはコンサルタントと協業する形でプロジェクトにアサインされます。
主に担うのは知見を活かしたデータ分析手法の設計やデータ収集/分析ですが、その結果を基に提言を求められることも多々あります。そのためコンサルタントに必要なロジカルシンキングやクライアントとのコミュニケーションスキルなどの基本的な素養は求められると言っていいでしょう。最近では、統計や機械学習の手法、データそのもの、なぜその結果や提言に繋がるか、をクライアントに分かりやすく説明する場が増えており、従来のコンサルタントもそれを担うものの、データサイエンティスト自身にも求められております。
データサイエンティストに求められる要件
データサイエンティストに求められる能力は以下の4つに集約できます。
なお、一言でデータサイエンティストと言っても、以下のどの能力が特に強いか、採用する企業側がどのような人材を求めているか、によって定義が異なる場合も有るため、その点は注意する必要があります。とはいえ、いずれかに突出した専門性や強みはあるにせよ、以下はいずれも最低限備えておく必要があります。
①機械学習・統計学のスキル
データを適切に解釈し、様々な機械学習や統計的手法のなかから問題解決に結びつくものを取捨選択し、実装・分析を進めていく力が求められます。こちらはデータサイエンティストとして当然持っておくべきスキルであり、これが欠けている場合は他のエンジニアやコンサルタントとの違いが無いと言えるでしょう。基本的な数学の知識から、統計学・機械学習に関する知識に加え、最新の論文を読解するリサーチ力や特定の分野(自然言語処理、画像認識、異常検知、時系列データなど)に関する理解、(マネージ側であっても)実装スキルなど、多くが求められています。
②エンジニアリングスキル
プログラミングやサーバ・データベースなどのインフラに関する知識をはじめとしたスキルを指します。イメージとしては、情報工学科で履修されるような内容に加え、実務で使用するWebフレームワークやAWS・GCPなどのクラウドサービス、ビッグデータを扱うソフトウェア(Spark, Hadoop, Hive)に関する知識が求められています。
また、アルゴリズムモジュールの組み込みまで行う場合はシステム開発プロジェクトに関する知見やPMO経験も求められます。
③ビジネススキル
データ分析を通して顧客に価値を提供するスキルを指します。クライアントのサービスやドメインについて深く理解した上で、社内外とコミュニケーションをとりながらデータアナリティクスプロジェクトを円滑に進めることが求められています。また、先進事例や、世界規模でのトレンドを押さえて自社内に取り組んでいくことも求められています。
これは時にビジネス側のコンサルタントと協同で進めていくものではありますが、データサイエンティスト自身がその感覚を身につけられれば、技術/ビジネスの分かる希少な人材になれます。
④コミュニケーションスキル
コンサルティングファームで働く以上、データサイエンティストもクライアントの経営層から現場層までとコミュニケーションを取る必要があります。レイヤー毎の利害関係や担当領域を考慮してコンセンサスを取るなどの、ビジネスの進め方における勘所を学ぶ必要があります。こちらは一般のコンサルタントに求められる能力と同様といえます。
また、上記でも触れている通り、データ分析に関する知識が十分でない方に対して、分析の方針や結果をわかりやすく説明するといった能力も必要です。
データサイエンティストとしてコンサルティングファームで働くメリット
①多様な業界に関わることが出来る
コンサルティングファームは基本的にプロジェクトベースでアサインされるため、様々な業界、業種、領域を担当することとなります。そのため、事業会社では経験できない業務をコンサルティングファームでは行うことが出来ます。
②実際のビジネス現場への活用に携われる
データ分析やアルゴリズムの組み込みを実際のクライアントの現場で行うことは、その成果を目の当たりにすることだけでなく、更なる改善(サービスやオペレーション)にその場で繋げていくことが出来ます。従来のデータサイエンティストはバックオフィス的な役割であることも多いため、クライアントの現場で、実際に取得できるデータに基づいて日々改善/改良に繋げられることは醍醐味があると考えます。
③ビジネススキルを伸ばすことが出来る
コンサルティングファームでは、新規事業やプロジェクトの立ち上げに関わることも多くあります。そのため、より実践的なビジネスのスキルを身に着けることが出来ると言えるでしょう。特に、将来起業を考えているという方には非常にオススメと言えます。
④ファームによっては非常に給与が高い
先ほども述べた通り、コンサルティングファームではデータサイエンティストの需要が非常に高まっています。求められる要件は高い水準であるものの、そもそも人材が希少なため1500万∼2000万円の年俸を提示するコンサルティングファームもあります。(※経験やポテンシャルによります)
コンサルティングファームのデジタル関連プロジェクト
以下記事にBCG/マッキンゼーのデジタルに関する取り組みや人材、コンサルティングファームの行うデータドリブンマーケティングについて纏めております。
・BCGの行うデジタルトランスフォーメーションとその人材_デジタルBCGとBCGデジタルベンチャーズ
・マッキンゼーの行うデジタルトランスフォーメーションと担う人材(デジタル・マッキンゼー)
・データドリブンマーケティングとコンサルティングファーム
データサイエンティストの採用状況
現在、各所でデータサイエンティスト職の人材不足が叫ばれています。様々な理由が存在しますが、実務経験のある人材が少ないというのが一番の理由でしょう。
一方で、より上流でデータサイエンティストとして活躍したいという考えから、コンサルティングファームでの同職種を目指す方が増えてきています。このことの背景には、AIなどのテクノロジーの進化によりエンジニア的なデータサイエンティストの役割は今後無くなっていくのではないか、という懸念があります。
コンサルティングファームにおけるデータサイエンティストの役割は、統計的分析・示唆出しに留まらず、データを用いた新規事業の提案、経営戦略の支持など、よりクライアントと密接に関わりあうことを前提としている場合が多くあります。よって、技術職的なキャリアに縛られたくないという考えから、現在ホットな転職市場となっています。さらに企業側からみても、専門技術を応用できる人材は貴重であるため、採用は活況だといえます。
ただし、企業によってはエンジニア寄りのデータサイエンティストを募集している場合もあるので、注意が必要です。
データサイエンティストとしてコンサルに転職するには
データサイエンティストは多くのスキルや知識を必要とする職種ですが、就職や転職の際にすべてのスキルを身に着けておく必要はありません。しかし、最低限度のスキルはもちろん必要になります。多くの企業の場合、Python/R/SPSS/SASなどによる統計処理や数理モデルの経験を必須条件としています。現在ではオンライン学習サイトでこういった技術を学ぶことも可能になっています。
さらに、コンサルティングファームではクライアントのニーズに応えるために、事業を深く理解する必要性があります。こういった意味で学習意欲も必要不可欠な条件といえるでしょう。
データサイエンティストの年収を上げるには?
アメリカでは、データサイエンティストの平均年収が約1200万円というデータがでています。一方、日本での同職種の平均年収は655万円と、アメリカの1/2程度しかありません。このことを踏まえると、実力と英語に自信がある方は海外での転職も選択肢の一つですが、日本の外資系ファームでも年収600~700万円ベースを提示している所は少なくありません。さらに条件によっては上限2000万円を提示する企業もあり、転職の際に年収を上げたいという希望を満たす事は、十分可能だと考えられます。
まとめ
ここまでコンサルティングファームにおけるデータサイエンティストの役割を見てきました。データとビジネスの密接なかかわりと、日本国内のエンジニア不足から、データサイエンティストの需要はますます高まっていくことが予測されます。さらに、コンサルティングファームにおいてビジネスの知見を得ることでデータサイエンティストとしてよりキャリアアップが望めるようになるのではないでしょうか。
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