AIコンサルタントになるには?必要なスキルや経験、年収などを紹介
Post Date:
2017-12-15 / Update-date:
2023-03-20 /
Category:
IT・デジタルコンサル特集
AIは昨今、その言葉がニュースなどで活用事例や倫理についての議論を目にしない日はないほど、多くの分野で多くの期待を持たれる概念となっています。
この特集は、簡単にAIの定義や歴史に触れ、AIが進化した未来における活用シーンから現在の活用事例などをご紹介して行きます。
- そもそもAIとは
- AIの歴史
- AIに活用される技術の代表例
- AIの未来
- シンギュラリティは来るか?
- なくなる仕事、残る仕事
- 現在の産業界におけるAI活用事例
- コンサルティングファームが提案するAI活用
- AIコンサルタントが注目されている背景
- AIコンサルで求められる経験や資格
- AIコンサルタントの年収は?
- AIコンサルタントに向いている人の特徴
- AIコンサルタントになるにはどうしたらいいのか?
- AIコンサルタントの将来性は?
- おわりに
- 参考文献
- 関連記事一覧
そもそもAIとは
AIの定義
AIとは「Artifitial Intelligence」の略で、直訳すると「人工知能」となります。一般的に、「設計者がプログラムした機能以外のことを自ら学習し成長するコンピュータ」のことが、イメージされるのではないでしょうか。
ただし、AIの定義は専門家の中でも定まっておらず、一種の流行り言葉のようになっているため、巷で使われている「AI」という言葉が指す範囲はかなり広くなってしまっています。極端に言うと単にプログラム制御されているだけの家電製品なども「AI搭載」のような謳い文句が踊ることもあります。
実は、今では当たり前に使われている自動変換機能やコンピュータゲーム、検索エンジンなどもAIの一種なのですが、現在は当たり前に普及し特に取り上げられることはありません。
現在、議論の際にイメージされるものは、機械学習やそれを進化させたディープラーニング(後述)といった先進技術、もしくはそれを利用し囲碁の世界チャンピオンに勝利したDeepMind社の「AlphaGo」や、クイズ番組で勝利したりレシピを考案したり多目的に商用化が進んでいるIBM社の「Watson」といったソフトウェアが一般的であると言えるでしょう。
- 中島 秀之(公立はこだて未来大学学長)
人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくることによって知能自体を研究する分野である - 西田 豊明(京都大学大学院情報学研究科教授)
「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である - 溝口 理一郎(北陸先端科学技術大学院大学教授)
人工的につくった知的な振る舞いをするもの(システム)である - 長尾 真(京都大学名誉教授前国立国会図書館長)
人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである - 掘 浩一(東京大学大学院工学系研究科教授)
人工的につくる新しい知能の世界である - 浅田 稔(大阪大学大学院工学研究科教授)
知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない - 松原 仁(公立はこだて未来大学教授)
究極的には人間と区別がつかない人工的な知能のこと - 武田 英明(国立情報学研究所教授)
人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である(中島氏と同じ) - 池上 高志(東京大学大学院総合文化研究科教授)
自然にわれわれがペットや人に触れるような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステムを、人工知能と定義する。分析的にわかりたいのではなく、会話したり付き合うことで談話的にわかりたいと思うようなシステム。それが人工知能だ - 山口 高平(慶應義塾大学理工学部教授)
人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム - 栗原 聡(電気通信大学大学院情報システム学研究科教授)
工学的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を越えているものを想像している - 山川 宏(ドワンゴ人工知能研究所所長)
計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んでよいのではないかと思う - 松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科准教授)
人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術
(※参考:国内の専門家によるAIの定義「人工知能は人間を超えるか」より引用)
AIの歴史
チューリングマシン
1936年、第二次世界大戦でドイツ軍が用いた暗号エニグマを解読した事でも有名なアラン・チューリングが「チューリングマシン」という計算モデルを提唱し、計算できることは全てコンピュータで実現できることを示しました。人間の脳は突き詰めれば電気信号が行き交う電気回路であり、電気回路であればコンピュータで再現できるはず、という考えがAIの概念を形作ったと言えます。
チューリングが1950年に論文で述べた「チューリングテスト」は、”機械の知性”について初めて触れるものでした。そのテストとは簡単に言うと、隔離されたコンピュータ(相手には人間がコンピュータか知らされていない)と文字にて会話を行い、人間と感じたら合格というものです。(※他にも解釈はあります)
現在までこのテストに合格したAIはごく少数で、それも条件付き(英語があまり出来ない13歳のウクライナ人と言う設定など)に限ります。そもそもテキストでのやり取りのみを想定していたり、目的が人間の模倣であったりとテスト自体に疑義はあるものの、AIの成熟度を図る一つの指標となって来たことに間違いはないでしょう。
第一次、第二次ブーム
第一次ブームは1950年代後半から1960年代にかけて生まれ、その時期にはコンピュータを使って特定の問題を「推論と探索」によって解くことの研究が進みましたが、現実的な問題の解決に応用するには程遠くブームは終了しました。
第二次ブームは1980年代にあり、特定の領域に関する知識をコンピュータに覚えさせることによって人間の意思決定をサポートする「エキスパートシステム」という考え方が生まれました。しかし、覚えさせる知識のデータベース化にかかる手間が膨大であり、曖昧な問題への回答も苦手であったことから現実的な問題解決への利用用途はごく一部に限られてしまい、このブームも1995年ごろに終わりを迎えました。
第三次ブーム(現在)
ムーアの法則に則ったコンピュータの処理能力向上やネットワークの高速化といった技術を土台として、大量のデータを用いる「機械学習」の研究が進んだことで、コンピュータが人間のインプットを超えて知識を蓄え「思考」や「予測」を行えるようになることに道が拓けました。
近年まで人間のような「特徴の把握」や「前提(常識など)を考慮した判断」を機械学習では自らの力で再現することが難しく現実問題への利用のボトルネックとなってしましたが、データを元に自ら特徴を認識することを実現した「ディープラーニング」の登場によりブレイクスルーが起こり、広く利用が進むことに非常に大きな期待が持たれています。
AIに活用される技術の代表例
機械学習
「機械学習」とは、世の中の特定の事象についてデータを解析し、その結果から学習して、判断や予測を行うためのアルゴリズムを使用する手法です。機械学習では、特定のタスクを完了するための明確な手順に沿って手作業でソフトウェア・ルーチンをコーディングするのではなく、大量のデータと、タスクを実行する方法を学習できる能力を提供するアルゴリズムに基づいて、マシンの「トレーニング」が行われます。
(※米NVIDIAホームページ「人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いとは」)
ディープラーニング
ディープラーニングとは、音声の認識、画像の特定、予測など人間が行うようなタスクを実行できるようにコンピュータに学習させる手法です。ディープラーニングでは、人間がデータを編成して定義済みの数式にかけるのではなく、人間はデータに関する基本的なパラメータ設定のみを行い、その後は何層もの処理を用いたパターン認識を通じてコンピュータ自体に課題の解決方法を学習させます。
(※米SASホームページ「ディープ・ラーニングとは」)
量子コンピュータ
現在のコンピュータと比べ、量子コンピュータは最大1億倍も速く組合せ最適化問題を解けると言われています。 これまでのコンピュータは0か1のどちらかの値をもつビットを使って計算しますが、量子コンピュータは同時に0と1の状態をもつビットで計算をします。つまり、n量子ビットがあると、2nの状態を同時に計算できるので、超並列計算を行うことになります。この量子コンピュータは、すべての計算問題において、画期的なものというのではなく、この並列計算が活用できる問題の場合に計算スピードがとても早くなり、活用価値があります。例えば、データベース検索や素因数分解では、これまでのコンピュータよりずっと高速に計算出来ることが証明されています。
(※米IBMホームページ「量子コンピューターとは」)
なお、2017年現在、カナダのベンチャー企業であるD-Wave Systems社が量子コンピュータ「D-Wave」シリーズを製品化しており、見た目は大きな黒く四角い箱型となっています。日常的にわれわれが使っているコンピュータとは違い、筐体の内部は「大きな冷蔵庫」のようになっていて、量子コンピューティングのカギとなる量子状態をプロセッサに作り出すため、極低温に冷やす仕組みを備えています。プロセッサは約マイナス273℃にも冷えており、絶対零度をわずか0.015℃だけ上回る温度で駆動すると言われています。
AIの未来
強いAI、弱いAI
AIには「強いAI」と「弱いAI」という概念があり、「強いAI」とは心を持ち自ら思考するAIのことを、「弱いAI」とは自ら思考する訳では無いが様々な問題を解決できるAIのことを指します。 強いAIを支持する立場から未来をイメージするときに、思い浮かぶのはやはり「ターミネーター」や「マトリックス」のようなハリウッド映画でしょうか。コンピュータが意思を持ち人間を攻撃(ターミネーターの「スカイネット」)したり、人間をバッテリーとしてプラグに繋ぎ仮想世界での生活を与え(マトリックス)たりする映像は、AIへの恐怖を駆り立てます。実際、テスラやスペースXの創業者であるイーロン・マスクや、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツなども強いAIを支持する立場をとり、AIの進化が人類にとって脅威になることを危惧し警鐘を鳴らしています。(※「2050年の技術」より)
「強いAI」の誕生については「特異点(シンギュラリティ)の到達」と同列に議論されることが多く、その概念と到達可能性については後述します。
「スターウォーズ」に出てくるドロイド達のように、人間のパートナーとして上手く共存することが出来ると良いのですが。
「弱いAI」については、現在のWatson(IBM)やAlphaGoの延長線上にあり、AIはあくまでも人間をサポートするものにしかならないとする立場です。AIの専門家には、現在のAIと強いAIの間にはまだまだ天地ほどの開きがあるとして、この立場をとる方が多いです。
この立場からAIの未来を思い描く際には、AI単体ではなく、センサリングの技術やロボット技術、遺伝子工学、ナノテクノロジーと組み合わせてイメージを膨らませる必要があります。
ニューヨーク市立大学理論物理学教授のミチオ・カクは、2100年のある日と題して、洗面台に立つだけでDNAセンサーやたんぱく質センサーが病気の兆候を分子レベルで調べ、調理ロボットが体調や好みに合わせた料理を作り、コンタクトレンズ型コンピュータを通じニュースを見て、自動運転の磁気自動車でオフィスに向かい、脳のシグナルでロボットを動かし仕事をし、大きな怪我があれば培養された臓器やロボットアームが治療の選択肢となり、週末に出会いが欲しければバーチャルアシスタントに好みのタイプを伝えてデートをセットし、スポーツ観戦はホログラムでスタジアムの真ん中から試合を見る。そんな未来を生き生きと描き出しています。(※「2100年の科学ライフ」より)
(※「2100年の科学ライフ」より)
シンギュラリティは来るか?
特異点(シンギュラリティ)という言葉は、元は天体物理学において光が逃れられないブラックホールにおける無限大の密度のことを指す言葉でしたが、未来学者のレイ・カーツワイルが2005年に著書で「テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来のこと」と定義しました。(※「ポスト・ヒューマン誕生」より)
簡単に言うと「コンピュータの知能が人間を超える時」とも表せます。カーツワイルの予言によると2045年にそれは訪れるとされていますが、現時点では代表的に以下の2つの問題が大きな壁として横たわっています。
フレーム問題
フレーム問題とは、ある問題を解決しようとする際に「関係のある知識だけを切り出し(枠:フレーム)て使う」ことの難しさを指しています。有名な例として、「部屋から絵を運び出せ」と指示されたAIが、天気や地面の材質、壁の色、などなど課題解決に不要な情報まで全てを無限に考慮してしまい動けなくなるという話があります。
シンボルグラウンディング問題
シンボルグラウンディング問題とは、AIが「言葉(シンボル)と実際の物/概念を結び付け(グラウンディング)られない」ことを指しています。例えば、シマウマを見たことがない人がいたとして、人間は「シマウマ」と聞いたときに縞のある馬をイメージすることができますが、コンピュータでは「シマ」と「ウマ」という言葉は記号に過ぎず何を指すのかわからない。実際にシマウマを見たときにも、人間は「シマ」のある「ウマ」を見て、「あれがシマウマかも」と類推することができますが、コンピュータはそれが出来ません。
なくなる仕事、残る仕事
2015年に野村総合研究所が「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」というレポートを発表しました。そこでは、創造性・協調性が必要な業務を担う人と、そうでない人の格差が広がることが示唆されています。
過去にも蒸気機関や電気、インターネットなどの技術革新によって失われた仕事と新しく生まれた仕事があったように、シンギュラリティが来ない未来においても、労働のあり方や人間ならではの付加価値は、AIによって変化を促されることになるでしょう。
【ご参考】
人工知能やロボット等による代替可能性が高い 100 種の職業
(50 音順、並びは代替可能性確率とは無関係)
IC生産オペレーター、一般事務員、鋳物工、医療事務員、受付係、AV・通信機器組立・修理工、駅務員、NC研削盤工、NC旋盤工、会計監査係員、加工紙製造工、貸付係事務員、学校事務員、カメラ組立工、機械木工、寄宿舎・寮・マンション管理人、CADオペレーター、給食調理人、教育・研修事務員、行政事務員(国)、行政事務員(県市町村)、銀行窓口係、金属加工・金属製品検査工、金属研磨工、金属材料製造検査工、金属熱処理工、金属プレス工、クリーニング取次店員、計器組立工、警備員、経理事務員、検収・検品係員、検針員、建設作業員、ゴム製品成形工(タイヤ成形を除く)、こん包工、サッシ工、産業廃棄物収集運搬作業員、紙器製造工、自動車組立工、自動車塗装工、出荷・発送係員、じんかい収集作業員、人事係事務員、新聞配達員、診療情報管理士、水産ねり製品製造工、スーパー店員、生産現場事務員、製パン工、製粉工、製本作業員、清涼飲料ルートセールス員、石油精製オペレーター、セメント生産オペレーター、繊維製品検査工、倉庫作業員、惣菜製造工、測量士、宝くじ販売人、タクシー運転者、宅配便配達員、鍛造工、駐車場管理人、通関士、通信販売受付事務員、積卸作業員、データ入力係、電気通信技術者、電算写植オペレーター、電子計算機保守員(IT保守員)、電子部品製造工、電車運転士、道路パトロール隊員、日用品修理ショップ店員、バイク便配達員、発電員、非破壊検査員、ビル施設管理技術者、ビル清掃員、物品購買事務員、プラスチック製品成形工、プロセス製版オペレーター、ボイラーオペレーター、貿易事務員、包装作業員、保管・管理係員、保険事務員、ホテル客室係、マシニングセンター・オペレーター、ミシン縫製工、めっき工、めん類製造工、郵便外務員、郵便事務員、有料道路料金収受員、レジ係、列車清掃員、レンタカー営業所員、路線バス運転者
人工知能やロボット等による代替可能性が低い 100 種の職業
(50 音順、並びは代替可能性確率とは無関係)
アートディレクター、アウトドアインストラクター、アナウンサー、アロマセラピスト、犬訓練士、医療ソーシャルワーカー、インテリアコーディネーター、インテリアデザイナー、映画カメラマン、映画監督、エコノミスト、音楽教室講師、学芸員、学校カウンセラー、観光バスガイド、教育カウンセラー、クラシック演奏家、グラフィックデザイナー、ケアマネージャー、経営コンサルタント、芸能マネージャー、ゲームクリエーター、外科医、言語聴覚士、工業デザイナー、広告ディレクター、国際協力専門家、コピーライター、作業療法士、作詞家、作曲家、雑誌編集者、産業カウンセラー、産婦人科医、歯科医師、児童厚生員、シナリオライター、社会学研究者、社会教育主事、社会福祉施設介護職員、社会福祉施設指導員、獣医師、柔道整復師、ジュエリーデザイナー、小学校教員、商業カメラマン、小児科医、商品開発部員、助産師、心理学研究者、人類学者、スタイリスト、スポーツインストラクター、スポーツライター、声楽家、精神科医、ソムリエ、大学・短期大学教員、中学校教員、中小企業診断士、ツアーコンダクター、ディスクジョッキー、ディスプレイデザイナー、デスク、テレビカメラマン、テレビタレント、図書編集者、内科医、日本語教師、ネイル・アーティスト、バーテンダー、俳優、はり師・きゅう師、美容師、評論家、ファッションデザイナー、フードコーディネーター、舞台演出家、舞台美術家、フラワーデザイナー、フリーライター、プロデューサー、ペンション経営者、保育士、放送記者、放送ディレクター、報道カメラマン、法務教官、マーケティング・リサーチャー、マンガ家、ミュージシャン、メイクアップアーティスト、盲・ろう・養護学校教員、幼稚園教員、理学療法士、料理研究家、旅行会社カウンター係、レコードプロデューサー、レストラン支配人、録音エンジニア
(※「野村総合研究所|ニュースリリース|2015/12/2」)
現在の産業界におけるAI活用事例
既に産業界において、AIの活用は始まっています。その代表的な例を挙げていきます。
医療:画像解析にAIを活用し悪性腫瘍の発見率を向上
米エンリティック社が、ディープラーニングを使った画像認識技術を活用して、レントゲン写真、MRI、CTスキャンなどを分析し、医師が悪性腫瘍の有無などを正確かつ早期の発見できるようサポートするシステムを開発しました。ちなみに、日本では丸紅と独占的業務提携契約を結んでいます。
(※丸紅株式会社|プレスリリース|2017/8/1|「米国 Enlitic 社との日本市場向けビジネス構築に関する独占的業務提携について」)
メガバンク:コールセンターへのWatson導入による、オペレーター回答の予測サポート
2015年、みずほ銀行がIBM社のWatsonをコールセンターに導入し、音声のデータ化からオペレーターの回答サポートまでを行なっています。
自動車:AIにより最適ルートをドライバーに提示
Uberは、ニューヨークに拠点を置くGeometric Intelligenceを買収し「Uber AI Labs」を設立。ドライバーにルートを提示する、需要と供給に対応する、相乗りサービス「uberPOOL」のための予測を行うなどの形で利用されている。将来的には自動運転車にも取り組むと言われています。
(※米Uber|ニュースリリース| 2016/12/5|「Founding Uber AI Labs」)
バックオフィス全般:RPA(Robotic Process Automation)導入でスタッフを90%削減
大手通信会社のコールセンター業務における事務処理をRPAにて代替。業務効率アップと作業ミスによるクレーム削減の両方の効果を挙げています。
(※RPA テクノロジーズ株式会社「RPA(ロボットによる業務自動化)とは」)
コンサルティングファームが提案するAI活用
AIの活用が始まっていく中、まだまだAIをビジネスに活用する実績を持つプロフェッショナルは少ないのが現状です。コンサルティングファームはビジネス戦略や業務オペレーションに関する知見を強みとして、最新技術とビジネスを結びつけることで企業価値の向上に貢献しています。
KPMGコンサルティング:RPAとAIの活用による「働き方改革」と企業の生き残り戦略
KPMGコンサルティングはRPAとAI活用にいち早く取り組み、働き方改革への応用を企業へ提案しています。RPAとAIの活用によって、ホワイトカラーが単純作業から解放され、長時間労働の是正と業務の高付加価値化が同時に実現できると提言しています。
(※KPMGコンサルティング株式会社|インサイト|2017/1/31|「RPA(Robotic Process Automation)やAI(Artificial Intelligence)が実現する『働き方改革』と企業の生き残り戦略」)
PwCコンサルティング:AIエンジン開発を行う企業と提携し、ロボティクス技術の活用を支援
PwCコンサルティングは2016年に、AIエンジンの開発を行うアイフォーカス・ネットワーク株式会社と、ロボティクスにおけるAIシステム企画・開発支援で協業を開始しました。 本協業では、アイフォーカスのAIエンジン「Qlofune」を活用し、ロボットの導入を検討している企業、ロボットの新規開発を計画している企業などを対象に、ロボティクスにおけるAIシステム開発を支援しています。
(※PwC Japan|プレスリリース|2016/9/9|「PwCコンサルティング、アイフォーカス・ネットワークと ロボティクスのAI導入分野で協業を開始」)
デロイトトーマツコンサルティング:AI活用による次世代コンタクトセンターの構築
AIの位置づけを、(1)「オペレーターの代替ツール」、(2)「オペレーターの支援ツール」、(3)「分析ツール」の大きく三種類に分類し、コンタクトセンターを取り巻く環境の変化から現在の課題、その投資対効果について提言を行なっています。
(※デロイトトーマツ|ナレッジ「AI活用による次世代コンタクトセンターの構築」)
AIコンサルタントが注目されている背景
AIコンサルタントが注目されている背景には、AI市場の拡大が挙げられます。AI技術は急速に進歩しており、これまでは業務効率化などにおいて部分的に運用するのが主でしたが、昨今では積極的にビジネスに活用したり、AIによって新たなビジネスを生み出せるシーンが増加してきています。
具体的な数字で見ても、株式会社アイ・ティ・アールの調査(※)における2020年~2025年でのAI市場の年平均成長率は18.7%(2021年時点予測)となっており、急速に市場が拡大していくことが予想されます。
こうした背景を踏まえ、AIをビジネスに活用したいと考えている企業は数多くあります。一方でAIという新しい技術に対してノウハウを有している企業は少なく、AIとビジネスを繋げるプロフェッショナルであるAIコンサルタントの需要は高まりを見せています。
AIコンサルで求められる経験や資格
前述のようにAIをビジネスに活用できるプロフェッショナルは少なく、AI関連事業者数も多くはありません。そのため、AIシステム構築経験者やAIを活用したコンサル経験者のみをターゲットに採用するファームは少ないです。したがってAIコンサルタントになるにあたり特定の資格が必須ということは現状ほとんどありませんが、多くのファームが求める能力や条件を、一例として以下にご紹介いたします。
・事業会社の経営企画、情報システム部門などでの実務経験
・機械学習や人工知能に関する知見・経験
・エンドユーザー/ITコンサルタントとしてのAIに関わりのあるプロジェクト経験
これらはマストの条件だといえます。一方、
・Python/Java/C# などを用いた実装経験
・AI導入を中心に据えたプロジェクト経験
等の実務経験は必ずしもマストではないものの、選考において加点されるポイントであることは間違いないでしょう。また、上記の要件を満たしているといえるデータサイエンティスト(データアナリスト/機械学習エンジニア)については、企業にとって大変有益な人材であるといえます。
(データサイエンティストについては弊社の特集記事「コンサルティングファームにおけるデータサイエンティストの役割」をご参照ください。)
AIコンサルタントの年収は?
ファームによって様々ではありますが、多い範囲を取ると800万円~1200万円といったところです。ただし、経験によっては2,000万円付近の条件の案件もありますし、現在でもプロフェッショナルの少ない中で、これから更なるAI技術の発展・普及が予想されますので、AI人材の需要増加に伴い年収基準が上昇していく可能性は大いにあります。
AIコンサルタントに向いている人の特徴
あくまで例にはなりますが、AIコンサルタントに向いている人の特徴を3つご紹介します。
プレゼンテーション能力が高い人
AIは幅広く実用化され始めて間もない分野であり、多くの人にとって理解が浅いものです。そのため、その有用性やできること・できないことを丁寧に説明しても、なかなかクライアントの理解を得られないケースもあります。そうした事態を防ぐためにも、難しい内容をわかりやすくかみ砕いて、なおかつ不十分にならないように説明できるプレゼンテーション能力が非常に重要になります。
技術志向になりすぎない人
AIコンサルタントはAI技術を駆使するものの、目的はあくまでクライアントのビジネスを支援する仕事です。そのため、必ずしもAIの機能をフルで活用することが最適とは限りません。AIに精通すればするほどAIを用いてできることも増えていきますが、そこで技術優先の思考にならず、あくまでクライアントの状況に即して適切に活用方法を考えるという思考ができる方はAIコンサルタントに向いているといえるでしょう。
自発的に学習できる人
コンサルタントは常に成長が求められるため、誰かに指示されずとも自分から勉強を進められる方に向いています。AIの側面からも同じことがいえます。AIは日々進歩している分野であるため、定期的に新しい知見を取り込んでいく必要があります。そのため興味を持って学習を継続できる人に向いているといえるでしょう。
AIコンサルタントになるにはどうしたらいいのか?
まず、AIコンサルタントになるために必須の資格はありません。ではどのような方がAIコンサルタントとして採用されるかという点についてですが、即戦力かポテンシャル採用かによって異なります。
まず即戦力の場合、コンサルティングファームでの業務経験や、SIerやその他事業会社での企画・システム開発経験等が挙げられます。AI人材はまだまだ数少ないというのが実情であり、AIに専門性を有している方のみが選考対象になるというケースはわずかです。むしろコンサルタントとしての能力が重要であり、AIに関する知見を有していなくても採用される可能性は十分にあります。もちろんAIに対する専門性をもっていれば、大いに有利に働くでしょう。
次にポテンシャル採用の場合、面接でのやり取り等から論理的思考力やコミュニケーション能力といったコンサルタントとしてのポテンシャルがあると評価された方が採用される傾向にあります。なおいきなりAIコンサルタントとして働くというよりは、ITコンサルタントなどからはじめ、ファームで成長していく過程で、AI関連に専門性を伸ばしていくというイメージに近いです。
AIコンサルタントの将来性は?
AIコンサルタントの将来性は高いといえます。前述の通り、株式会社アイ・ティ・アールの調査によれば2020年~2025年でのAI市場の年平均成長率は18.7%(2021年時点予測)と予測されており、年々市場規模は拡大していく見込みとなっています。また、少子高齢化の観点からもAIの活用は避けて通れません。
AI市場の成長の分だけプロジェクトの数あるいは規模も増大していくと考えられます。AI人材が不足している現在の状況を鑑みても、AIコンサルタントのニーズは高い状態が維持されると予測を立てることができます。
おわりに
ここまで読んで頂きましてありがとうございます。 AIという概念の広さと深さ、そして未来について感じて頂けたのではないでしょうか。
まだまだ技術として確立されておらず、実用化についても手探りで進み始めた状況であるAIですが、iPhoneの登場で一気に社会インフラとなったスマートフォンのように、AIも何がきっかけで爆発的に普及が進んで世界を変えてしまうか分かりません。
先端技術とビジネスと結びつけ企業変革をリードするコンサルティングファームにて、AI活用のフロンティアとして活躍するキャリアは、AIを「使う」側の人間として高い価値を生み出すことができる魅力的な仕事なのではないでしょうか。
参考文献
- レイ・カーツワイル(2007)『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(井上 健/小野木 明恵/野中香方子/福田 実 訳)|NHK出版
- 松尾 豊(2015)『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』KADOKAWA/中経出版
- ミチオ・カク(2012)『2100年の科学ライフ』(斉藤 隆央訳) NHK出版
- ピーター・H.ディアマンディス/スティーヴン コトラー(2014)『楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする』(熊谷 玲美訳) 早川書房
- 英『エコノミスト』編集部(2017)『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』(土方 奈美訳) 文藝春秋
- AIビジネス研究会|福林 一平(2016)『60分でわかる! AIビジネス最前線 』 技術評論社
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