金融インダストリー(保険)
Post Date:
2016-07-03 / Update-date:
2021-05-26 /
Category:
金融コンサル特集
この特集では、保険業界についてお話し致します。
保険業界では、IoTやセンサーといった新たな技術やRPA、AIチャットボット、アナリティクス、といった様々なデジタルソリューションの登場により、ビジネスチャンスが生まれています。業界のトレンド、課題感に触れ、保険業界でのコンサルティングファームでのプロジェクトについて、ご紹介致します。
業界トピックス
①保険会社とIoT
サイバーセキュリティを守る
多くの企業がサイバー攻撃の脅威にさらされている中、クレジットカードや保険の個人情報データの窃盗ケースが後を絶ちません。デバイスのハッキングや情報漏えいに留まらず、遠隔操作で全てがコントロールされるなんてこともあり得る世の中。IoTの成長過程と同時にこのような問題が浮き彫りになっていることは非常に恐ろしく、一刻も早い打開策が必要となります。
近年では数多くのハッキングが見られ、中でも代表的な事例として”ジープ・ハック”が挙げられます。これはジープの製造会社FCA社が、IoT機能を介してジープのハッキングに成功し、インターネットに繋がれた自動車の脆弱性を証明したというケース。サイバーハッキング防止に向けた保険契約の需要がさらに高まる一方、サイバーセキュリティーのリスク監査をすることが難しいことから、サイバー保険契約を保持している保険会社は非常に少ない現状です。サイバーセキュリティの安定性が危ぶまれる中、各保険会社が今後サイバーセキュリティー対策の強化に向けてどう柔軟に対応できるかがカギとなりそうです。
(参考:内閣サイバーセキュリティセンター公式HP)
IoTヘルスケアとホームデバイスを導入
昨今、保険会社はリスクを減少し保険契約を価格化するために、IoTデバイスを積極的に活用をしています。IoTデバイスが使われた代表的な理由として、自動車保険加入者の運転方法によって保険条件を柔軟に変更できるようにするため、加入者が自動車をどのように運転しているかをデータ化するという事例が挙げられます。
また、今後は保険会社によるIoTデバイスの利用範囲が住宅、健康、自動車と包括的に拡大していく傾向にあると予測されています。大手コンサルティングファームが行った調査によりますと、2014年~2015年にローンチした保険会社のうち、ホームデバイスやヘルス・フィットネスモニターを導入する保険会社がほとんどだったことが判明しました。つまり、今後保険会社はIoTデバイスの導入をすぐにでも検討する必要があると言えます。
(参考:IoTが創り出す近未来のヘルスケア 誰もが健康で、安心に暮らせる社会へ|日立公式HP/インテルが語る「IoT×ヘルスケア」|日経デジタルヘルス)
②ディストリビューションの差別化
保険商品の二極化
保険業界では、多くの保険商品のコモディティ化とテーラーメード化の二極化が今後ますます進んでいくと言われています。とりわけコモディティ化した商品を扱う保険会社が多くを占めると考えており、顧客と自社にとってベストミックスとなる「ディストリビューション」戦略の検討が求められます。実際、海外保険会社のCxOの関心は「ディストリビューション」に向いています。
ほかの業界に比べて、保険業界では特に顧客エクスペリエンスへの対応が遅れているのが現状です。顧客接点のデジタル化に関する顧客の満足度も他業界より低いという調査結果が出ており、顧客とのギャップは広がる一方です。逆にその領域において抜きんでることができれば、企業にとっては、差別化を実現するチャンスとなります。
欧米ではITの投資領域はすでにデジタルからポストデジタル(モバイル、SNS、クラウド、IoT)にシフトしており、この進んでいくポストデジタルの世界では、顧客エンゲージメントモデル(注意喚起、感動、購買意欲の駆り立て、販売への動線を複数の顧客接点でシームレスに描くモデル)が必要ですが、日本の保険業界はその領域に達していません。
二つの差別化
ディストリビューションの差別化には大きく「横方向」と「縦方向」の差別化があります。
横の差別化とは、すなわちグローバル化であり、国内のレッドオーシャン化した市場から、海外に打って出るということです。一部の日本の保険会社は、グローバル志向を強めていますが、外資系グローバルプレーヤーに比べると道半ばの位置づけとなります。
次に縦の差別化ですが、これは国内チャネルの複層化・進化を意味します。消費者にとって商品の認知、検討、購買、そしてその後の契約保全と、ステージによって自分の好きなチャネルを使い分ける「複層化」はもはや当たり前の習性となっています。ここで差別化のカギとなるのが、顧客エンゲージメントモデルとテクノロジーです。各社のターゲット顧客を複数のセグメントに分け、それぞれに対して顧客エンゲージメントモデルを構築します。さらに人間とテクノロジーを組み合わせて有効活用することで、透明性と信頼性を高めることが必要になります。
顧客中心主義を実現
日本の保険会社もこれに対して顧客接点の高度化やデジタライゼーションなどの数々の試みを実施していますが、根本的にチャネルごとの縦割りの対応から抜け出せていません。確かに今後も、戦後から日本の保険会社を支えてきた営業職員や代理店といった属人チャネルがマジョリティを占めることに変わりはなく、利便性と日本特有のホスピタリティのバランスを保つ、もしくは進化させることで、他社と差別化を図る道もあります。しかし、真の顧客中心主義を実現していくためには、他チャネルの育成に努めることが必要となります。
その際には、チャネル間のコンフリクトが発生することが想定されます。日本の保険会社はチャネルが軸となり戦略を練り、各チャネルがそれぞれ成長を追求するための組織設計がなされてきたため、同一組織でチャネル戦略を検討すると、おのずとチャネル間の意見対立が発生しやすいからです。チャネル間のコンフリクトを最小限にするためには、あわせて組織戦略の見直し(ホールディングス化)なども必要となるでしょう。
このような対応によりポストデジタル技術をうまく利用し、顧客特性を捉えた適切なセグメンテーションを設定し、最も効果的なチャネルミックスを実現できる企業が生き残ると考えられます。今まさに大きな転換期に差し掛かっていると言えるでしょう。
上記トピックスのようなケースで求められるコンサルタントの主な役割
①デジタルと革新的な技術導入の戦略立案、実行支援
ソーシャルメディア、スマートデバイス、ビッグデータ、そしてクラウドなど進化するデジタル技術が日々の生活へ急速に浸透することにより、顧客の期待を劇的に変化させ、市場を再定義させています。保険会社はこの市場トレンドに対応するため、現在の経営戦略、オペレーティングモデル、テクノロジーを変革することを強く求められています。このような状況下で保険会社のデジタル社会での成功を支援するため、戦略から実行までをトータルにサポートするデジタルソリューションを提供していきます。
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デジタルインテリジェンス(顧客を知る)
顧客の感情を理解し、競争優位性を獲得するためのデータ活用
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デジタルソリューションズ(テクノロジーを通して促進させる)
顧客中心の業務設計とモバイル、ウェブサイト、ソーシャル・ソリューションのアジャイルによる提供
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デジタル&マルチチャネル戦略(ビジネスの進化)
デジタル企業型ビジネスモデルへの変革を支援する包括的、統合的なアプローチ
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ソーシャルエンタープライズ(ビジネスの進化)
組織的な結びつきと効率性を高める戦略とソリューションの構築
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イノベーション(新しいバリューの創造)
持続的なイノベーションを生み出すために、今日のビジネス課題のブレークスルーと新たな労働習慣の定着化を支援
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サイバーセキュリティ(将来を守る)
オンラインセキュリティーやサイバー犯罪に関連するリスクからの保護とリスクの低減
(参考:保険業界のデジタル化の現状と取り組み|損保ジャパン日本興亜総研レポート)
②顧客戦略/顧客体験の変革
日本の保険市場のように成熟し、競争が激しく、消費者の目から見ると比較的画一的な商品を扱う市場においては、有益な顧客を深く理解し、自社の魅了を伝えて既存契約を維持すること、および競合他社からの乗り換えを増やすことが重要であり、以下の3つの相互に影響しあうドライバーが成功の鍵と考えられます。
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顧客の声(VoC)を聴く
変わりゆく顧客の不満、ニーズ、ロイヤルティードライバー、および顧客の潜在化している心の声を把握すること
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顧客セグメントにマッチした顧客体験を提供する
顧客ごとに異なる期待やニーズを的確に捉え、適切な体験を提供することで顧客のファン化を促進すること
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保険の枠を越えた、顧客の人生の価値を訴求する
金融は顧客の人生の価値やテーマを実現する一つのツールであり、顧客をよりひきつけファン化するために、金融の枠を越えて、人生の価値やテーマをサポートする一貫したスキームを提供すること
上記の成功の鍵をもとに顧客戦略のソリューションを提供していきます。
③新興国展開
国内生損保会社は、競争激化、高齢化社会、コスト削減や成長圧力、飽和する国内市場といった要因によって、海外市場へのビジネス機会を求めざるを得なくなっています。海外進出を成功させるためには、進出先の社会的・文化的・地政学的風土に関して豊富な知識を持ち、規制の構造や市場における消費者の行動を把握している必要があります。また、グローバルで運営を行うと同時に、地域に寄り添った考えと行動が求められます。
クライアントの新たな海外進出による成長をサポートする為のコンサルティング
- 有効的な進出先の選定と適切なビジネスモデルの構築などを含む海外進出戦略の策定によるグローバルマーケットでの成長
- グローバル化成熟度モデルによる会社の運営、商品、ベンダーにかかる戦略の評価
- 組織の戦略計画への顧客行動・ニーズの埋め込み
- イノベーションと組織再編成の機会評価のためのプロダクトポートフォリオの評価
- 目的達成のためにパフォーマンス可視化と評価を可能にする、適切なKPI・評価制度およびモニタリング制度の導入
- 即応性、およびリスクに対する分析と実行のためのプロジェクトプランの実施
保険インダストリーの主なコンサルティング内容
上記トピックス以外にも、業界を取り巻く社会環境の構造変化の中で、保険会社が競争を勝ち抜くために 戦略立案から実行まで一貫したコンサルティングサービスを提供していきます。
経営戦略
- 新規事業/新規市場参入戦略(新規日本市場への参入、生保事業の立ち上げ、新商品開発)
- 海外進出戦略
- 間接費削減(購買集約化、調達コスト削減、成功報酬型物件費コストの削減)
経営改革
- 営業拠点改革(営業所統廃合・新規出店構想)
- 契約管理/保全プロセス最適化
- 保険金支払・クレーム処理高度化
- アウトソーシング/シェアードサービス
リスク管理/財務管理
- IFRS/SolvencyⅡ(プロジェクト計画策定、システムグランドデザイン)
- 統合リスク管理(統合リスク管理態勢成熟度評価、オペレーショナルリスク計量化)
- 単体決算/連結決算実務(J-GAAP・US-GAAPベース決算実務)
- 会計システム導入(グローバル経営管理システム導入)
- 決算プロセス最適化
チャネル戦略
- 次世代代理店モデル(代理店CRM基本構想、代理店事務プロセスオートメーション)
- 新営業職員モデル(チャネルミックス型募集モデル、募集成績データマイニング)
- 新規チャネル設立
- モバイル/WEB戦略(募集支援端末イノベーション)
顧客リレーションシップ管理(CRM)
- マーケティング(Webマーケティング、インターネットサイトベンチマーキング)
- CRM基盤強化(全社CRM基本構想、統合顧客DB基本構想)
- カスタマーセンターアセスメント/顧客接点高度化
- BI for Insurance(顧客離反予兆分析、新規顧客分析、クレーム処理分析)
ITマネジメント
- IT戦略策定支援(中長期IT戦略、IT組織診断、IT運用・保守体制設計)
- システム基盤構想・構築(パッケージ選定、ビジネスアナリスト、PMO)
- 内部統制/コンプライアンス強化
- ITガバナンス(グローバルITガバナンス、情報セキュリティ管理)
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