コンサルティング業界とは?
ファームの種類や仕事内容、
魅力、将来性などを解説
Consulting Industry Information
コンサル業界情報について、市場規模やこれまでの歴史、
ファームごとの特徴について詳しく解説しております。
各ファームの代表的な企業情報も合わせてご覧ください。
- コンサル転職エージェントのエグゼクティブリンク
- コンサルティング業界とは?ファームの種類や仕事内容、将来性などを解説
コンサルティング業界とは?
どんな仕事をするのか
コンサルティング業界は、経営や会計、人事やITなど様々な領域で課題を抱えている企業に対し、経営戦略や業務プロセス、人事戦略やマーケティング戦略、IT戦略などを提供することで課題解決を支援する業界です。専門的な知識・ノウハウを持ったコンサルタントが、企業の内外にある情報を収集・分析して問題点を明らかにします。そのうえで、問題点に対する解決策やアドバイスを提供し、クライアント企業の経営改善や業務効率化を支援していきます。
コンサルティング業界の
ニーズが
高まっている理由
コンサルティング業界が成長している理由の一つは、複雑化するビジネス環境に対応するために、経営戦略や業務プロセスの最適化を求める需要が高まっていることです。また昨今は、デジタル技術の発展にともない、デジタルトランスフォーメーションやビッグデータ分析などの分野でもコンサル需要が増加しています。さらに、コロナ禍において多くの企業が経営戦略の見直しやコスト削減などを迫られるなかで、コンサルティング業界全体の需要が高まっているのが現状です。
IDC Japanが発表した「国内コンサルティングサービス市場予測」によると、2020年~2025年のコンサル市場全体の年平均成長率(CAGR)は7.8%で、2025年には1兆2,551億円に達すると予測しています。
コンサルティング業界の歴史
History
コンサルティングの始まり
コンサルティングの祖は19世紀後半のフレデリック・テイラーと言われています。テイラーは自身の働く工場の業務を研究し、業務の最適化をすることで工場の生産性を倍以上にすることに成功しました。その後、多数の工場でも業務の効率化を実現し、自身の経験則を「科学的管理法」へと昇華させ、これがコンサルティングの始まりになります。なお、今では科学的管理法はほとんど定着していませんが、当時のインパクトは大きく、経営学発展の一助になっているのは間違いありません。
一方で、テイラー手法は、現在のような体系だったコンサルティングではなく、まずは彼自身が開発した高速度工具鋼の導入や、工場のレイアウト改善を中心に行うものでした。そのため、テイラーは外部からのアドバイスに留まる、限定的な意味合いでのコンサルティングの祖という方が適切でしょう。
「個人」から「(経営コンサルティング)ファーム」へ
テイラーの登場以降、当時大企業が台頭しつつあったこともあり、経営管理手法に関する研究が盛んにおこなわれました。ハーバード大学においてMBAのプログラムが開講され、経営学に明るい人材が増えてくると、個人で事業を行うコンサルタントが大企業の潤沢な需要を飲み込みながら規模を拡大させていきました。
そんな中、世界最古といわれるコンサルティングファームである「アーサー・D・リトル」が1886年に、当時は「グリフィン&リトル」という名称でマサチューセッツ工科大学キャンパス内に設立されました。1910年頃のGMのプロジェクトに参画したことをきっかけに徐々に経営コンサルティング領域に着手し始めました。
時期を同じくして、現在のコンサルティング業界を牽引する多数の経営コンサルティングファームが生まれました。 1914年には「ブーズ・アレン・ハミルトン」「Strategy&」の、1926年には「マッキンゼー&カンパニー」「A.T.カーニー」の前身となるコンサルティングファームがそれぞれ設立されました。
ファームを形成することで、規模の大きな案件を受けることができ、また社内にナレッジが蓄積されていきました。経験則的なコンサルティングから情報収集/分析の手法を重視するコンサルティングへと変化していったのもこの時期です。
ITコンサルティングの誕生
1950年代になり、「IBM」が商用コンピューターを販売するようになりました。その際、IBMは導入したコンピューターが企業内で確かに稼働するようにプログラムを組むサービスに力を入れました。モノを売るだけでなく、顧客の内部事情に精通し、最適なソリューションを提供する領域に進出した形です。これがITコンサルティングの始まりと考えられています。
しかし、1956年に司法省から「コンピュータ市場の優位性を活用したサービス市場の独占」との告発を受け、独占禁止法の適用を受けます。裏を返せば、ソリューション提供の需要が社会的に認められ始めたという事でもあり、IBMがITコンサル市場から撤退した後、SIerが数多く誕生するようになりました。
なお、近年においては、経営とITを切り離して考えることが難しくなってきており、経営/戦略を手掛けるITコンサルティングファームが台頭してきています。
グローバルファームの誕生
1960年頃になると、コンサルティングファームはマッキンゼーを中心に世界中に支社を設立するようになります。 中でも、日本にいち早くオフィスを設立した「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)」は世界的に大きな影響を与えました。 BCGは経験曲線やPPMポートフォリオを考案し、それらは現在でも若手コンサルタントやMBAの学生が学ぶフレームワークの1つとなっています。
レポートを作成し、経営に関する提言を行うのが主だった経営コンサルティングに新たな手法を生み出したのが「ベイン&カンパニー」です。ベイン&カンパニーは経営への提言から、その実行までを包括的に支援することを目指し、クライアントの株価という明確な数値をコンサルティングの定量的な成果としました。そして、それまで常識とされていた固定フィーから、一部を成果報酬型の料金体系に変更、株式での支払いを可能にするなど革新的な施策を打ち出しました。
会計系コンサルティングファームの誕生
2001年、エンロン社による粉飾決済(エンロン事件)が発覚した際、監査の中立性の観点から会計事務所がコンサルティング業務を行う事が全面的に禁止になりました。これを受けて大手監査法人は一時期コンサルティング業界から姿を消しました。
しかし、多数の独立/統合/買収を経て「PwCコンサルティング」「デロイトトーマツコンサルティング」「KPMGコンサルティング」「アーンスト&ヤング」といったBig4と呼ばれる会計系コンサルティングファームを形成しました。
ちなみに、エンロン事件で監査を担当していた「アーサー・アンダーセン(現アクセンチュア)」は会計士免許を返上しており、Big4には数えられていません。
日本におけるコンサルティング
日本で本格的にコンサルティングを行うようになったのは1966年のBCG東京オフィス設立後です。これ以降、外資系戦略ファームが立て続けに日本オフィスを設立しています。この動きに呼応するように日本国内でもコンサルティングファームが発足するようになりました。日本発のファームとしては、大手企業を母体に持つシンクタンク系(総研系)のファームや、中小企業向けコンサルティングを行うファーム、ITコンサルティングを専門的に行うファームがあります。これらのファームは近年のITバブルなどの影響で徐々に規模を拡大させています。
一方で、やはり給与の良さや案件規模の大きさなどで人材が集中している外資系のコンサルティングファームが台頭しているというのが現状です。欧米比較でコンサルティングの浸透率が低いのは事実ですが、大企業を中心に自社だけでの解決、施策の加速化等が難しいテーマを中心に、コンサルティング需要は拡大しております。ファーム側もクライアントの要望に応じて、案件の上流(戦略)から下流(実行/開発)まで対応可能なフルラインナップ、デジタル化の促進、人材の多様化等を進めており、日々進化を続けております。
コンサル会社
業界分類・種類
Classification
今では戦略、IT、人事、ファインナンスなどのテーマから、製造、小売、医療など業種に特化したものまで多種多様な コンサルティングファームが存在します。特徴別に業界を分類しましたので、活躍するファームと合わせてご覧ください。
-
戦略系ファーム
大手のグローバルカンパニーの経営層に対して、CEOが抱えるCEOアジェンダに対し、戦略面等でコンサルティングを行う。インダストリーやテーマについては全社経営戦略、M&A戦略、M&A後の統合戦略、新興国進出戦略などプロジェクトテーマについても幅が広いことが特徴です。
-
業務・IT系ファーム
企業の業務プロセス、オペレーション等に対し業務改善を行うことで経営改善を行っていくのが特徴。業務改善に紐づくかたちで、ERP導入、SI、BPOなどの実行までを一貫して場合もある。コンサルティングテーマは、戦略策定、M&A、会計支援、CRM、SCM等幅が広く、一定以上のキャリアについては、特定の領域ごとのチームに所属することが多く、キャリアとしては特定領域の専門性を身につけることができます。
-
シンクタンク
民間企業に対してのマネージメントコンサルティングやITコンサルティングを行うとともに、官公庁向けのリサーチ業務、政策提言、エコノミスト等の幅広い業務領域をカバーしています。
-
組織・人事コンサル
クライアント企業に対して人事制度設計、評価制度、役員報酬などの人事領域におけるコンサルティングを行います。近年では、M&Aに伴う合併に関わる制度統合などのプロジェクトも多い状況。また、組織風土改革や人材開発・教育開発、チェンジマネジメントなどの人・組織に関わる制度以外のソフト面でコンサルティングの提供も行っている。
-
FAS
M&A(合併・買収)に関わる経営戦略の決定から相手企業との契約締結までの複雑なプロセスにおいて、各種コンサルティングを提供します。コンサルタントとしてのキャリアとしてはコーポレートファイナンスにおける知見を高め、M&Aにおける戦略策定、バリエーション、モデリング等特定領域における専門性を高めていくことが可能です。
-
事業再生・
ハンズオン型支援経営戦略の策定から実行までを一貫して行い、また実行の際は自ら組織内部に入り込んでいくことで、企業価値を高めていくことを目的としていることが特徴。状況に応じて、デッドの保有、エクイティ投資を行い、支援先の支配権・経営権を保持し、マネージメントとして参画し、経営を行なう場合もあります。支援先についてはファームごとに特徴があり、ベンチャー投資や新規事業開発、企業再生などファームの経営陣の特性によってデーマが異なります。
-
監査法人
監査法人での監査業務を行うとともに、監査クライアント以外の企業に対してはビジネス、システムなど多岐にわたるアドバイザリー業務を行います。
-
ミドルマーケット
ミドルマーケット(中堅・中小企業)が抱える様々な経営課題を解決することを目的に、経営計画立案支援や事業再生、事業承継、M&A、IPO支援、組織改革、人材育成、情報セキュリティ関連など非常に幅広い領域を支援しています。大手企業をクライアントとするコンサルファームと比べ若手コンサルタントの裁量権が非常に大きく、自ら営業活動を行うことで、自身の手掛けたい案件を自らの力で獲得していくことも可能です。また、直接クライアント企業の社長と話す機会も多く、経営者と深いリレーションを築区ことが出来るので、長期的に企業を支援して行きたい方にはフィットしているコンサル領域といえます。
-
コンサルファーム一覧
- ローランド・ベルガー
- Monitor Deloitte(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
- Strategy&(PwCコンサルティング合同会社)
- アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社
- 株式会社ドリームインキュベータ
- 株式会社コーポレイトディレクション(CDI)
- 株式会社 経営共創基盤
- 株式会社YCP Japan
- 株式会社フィールドマネジメント
- アビームコンサルティング株式会社
- EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
- 株式会社ベイカレントコンサルティング
- 株式会社日立コンサルティング
- 株式会社 クニエ
- 株式会社シグマクシス
- ガートナージャパン株式会社
- 日本アイ・ビー・エム株式会社
- フューチャー株式会社
- スカイライト コンサルティング株式会社
- NTTデータ経営研究所
- みずほ総合研究所株式会社
- 株式会社大和総研
- 株式会社富士通総研
- 株式会社リンクアンドモチベーション
- 株式会社 コーチ・エィ
- 株式会社HRインスティテュート
- アルー株式会社
- 株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース
- GCA株式会社(旧:GCAサヴィアン株式会社)
- PwCアドバイザリー合同会社
- EYフィナンシャル・サービス・アドバイザリー株式会社
- 株式会社リヴァンプ
- アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー
- 船井総合研究所
- ラーニングエージェンシー
コンサルティング業界の「日経」「外資系」の違い
日系のコンサルティングファームと外資系のコンサルティングファームの違いについてご説明します。
日系コンサル企業の特徴
日系のコンサルティングファームでは、1人のコンサルタントが同時に複数のクライアントを担当するケースが多く、定期的にクライアントを訪問して、長期にわたってコンサルティングサービスを提供していきます。クライアント企業との関係構築に力を入れ、信頼関係を重視しています。
日系コンサルティングファームは成果主義で評価をするところがほとんどですが、じっくりと腰を据え、長期的に会社とクライアントに貢献できる環境なことが傾向としては多いようです。また、事務的な手続きや報告書の作成が多いなど、日本ならではの慣習が根付いているファームも少なくありません。職場内の上下関係は明確ですが、若手社員のアイデア・意見を積極的に取り入れるなど、風通しの良いファームも増えています。
外資系コンサル企業の特徴
外資系のコンサルティングファームは、複数のコンサルタントがチームを組んで1~2つのプロジェクトに専念する形でコンサルティングサービスを提供しています。多くのファームはコンサルタントの自己実現やキャリアアップに重点を置いており、若手コンサルタントに多くのプロジェクトを経験させ、キャリアアップを促す環境を整えています。また、多様性に富んでいるのも特徴で、様々な国籍・バックグラウンドを持つ人材を採用することでグローバルなチームを編成しています。
外資系のコンサルティングファームは実力主義・成果主義の世界であり、総じてプロジェクトの規模が大きく単価が高いため、クライアントの期待値も高く、失敗が許されない緊張感があります。それゆえ、コンサルタントには高いレベルの知識・スキルと、プレッシャーやストレスに耐えられる強いメンタルが求められることもあります。
外資系コンサルティングファームの仕事内容や年収については、以下の記事で詳しく解説しています。
外資コンサルの仕事内容や年収は?転職のメリット、方法まで解説
コンサルティング業界の市場規模
Market Scale
現在の市場規模
IT専門調査会社IDC Japan株式会社の調査によると、2018年の日本におけるコンサルティング業界の市場規模は前年比6.4%増の7,659億円と言われています。特にデジタルトランスフォーメーションに関わるコンサルティングはビジネス/ITコンサルティング双方で成長しており、前年比40.5%増の709億円となっています。
2018年~2023年の年平均成長率は5.4%と推計され、2023年には9,969億円に達すると予測されています。
過去10年の市場動向
コンサルティング業界の市場規模はクライアント企業の業績の良し悪しに大きく影響されます。そのため2008年のリーマンショック以降、クライアント企業の業績が低迷した影響を受けてコンサルティングファームの業績も停滞していました。
その後、2012年から政府による経済政策、金融緩和政策で円安傾向になったことを受けて景気回復の兆しが見えたことをきっかけに市場規模の拡大が始まりました。例えば、企業の海外進出案件の増加や、ビッグデータ/AI/クラウド活用の案件増加などが相次いで起こり、堅調に成長を続けています。
近年は先述の通りデジタルトランスフォーメーション案件が増加しており、市場規模の拡大が続くと見られています。
コンサルティングプロジェクトの
流れ・進め方
コンサルティングファームのプロジェクトは、以下のようなステップで進められるのが一般的です。
▼①プレゼンテーション
プロジェクトの提案書を作成し、企業の経営層に対してプレゼンテーションをおこないます。他のコンサルティングファームとのコンペになるケースもあります。
▼②受注
プレゼンテーションを受け入れてもらえたら契約を締結し、案件の受注となります。
▼③プロジェクトの立ち上げ
コンサルティングファーム内で担当者がアサインされ、プロジェクトチームが発足したら、プロジェクトの目的やスコープ、期間などを決定します。その後、クライアントも含めたキックオフミーティングを開催し、メンバーの顔合わせとプロジェクトの全体感の確認をおこないます。
▼④現状調査
クライアント企業の現状を調査します。業務フローや組織構造、財務状況などを把握し、課題を洗い出します。
▼⑤解決策の提案
現状調査の結果を踏まえて解決すべき課題を特定し、解決策を提案します。
▼⑥実行計画の作成
解決策が採用されたら、実行計画を作成します。具体的なスケジュールや役割分担、リソースの確保などをおこないます。
▼⑦実行とモニタリング
プロジェクトを実行し、進捗状況をモニタリングしていきます。必要に応じて、プロジェクトのアクションプランを見直すこともあります。
▼⑧評価と報告
プロジェクトが終了したら、成果を評価し、報告書を作成します。その後、クライアント企業の経営層に報告をおこないます。
コンサルティングファームにおけるプロジェクトの流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
プロジェクトの流れ
コンサルティング業界の魅力は?
コンサルティング業界では、クライアントとの信頼関係を構築することが仕事の基本になります。クライアントの状況を理解するために話を聞いたり、納得を得られるように資料を作成したりと、常にクライアントに対する配慮が欠かせません。クライアントが求めていることに対して最適な価値を提供していくことで、徐々に信頼関係が築かれていきます。プロジェクトの成果が出て、クライアントの信頼を獲得できたときは大きな喜びや達成感を得られるでしょう。
また、コンサルタントは多様な業界・企業の課題解決を支援します。多様なプロジェクトに参加し、数多くの経営者や経営幹部と対峙し、様々な課題解決に取り組んでいくなかで、多くのビジネス知識や専門知識を身に付けることができます。視野が広がり、見識が高まり、自分の成長を感じられることもコンサルティング業界で働く大きな魅力だと言えるでしょう。
高収入であることも、コンサルティング業界で働く魅力の一つです。大きな責任やプレッシャーをともなう仕事ですが、成果を出すほど報酬が上がり、キャリアアップしていけるのは大きなやりがいになるはずです。
まとめ
コンサルタントは多様な業界・企業の課題解決を支援するため、多角的なビジネス知識や経験を身に付けることができます。また、クライアント企業の課題解決に向けた提言をおこなうことで、自らのアイデアや提案力を発揮できることも魅力の一つです。成果に応じて高い収入を得られる業界なので、日々高いモチベーションを持って働くことができるでしょう。
今後もコンサルティング市場の成長は続き、コンサルタントの需要はますます高まっていくことが予測されています。ぜひ、コンサルティング業界を多くの経験を得て、自己成長を遂げていきましょう。
関連記事一覧
「コンサルタントに資格は必要?おすすめの資格を解説します」
「コンサルタントに必要なスキルは?仕事内容や役割も解説」
「外資コンサルの仕事内容や年収は?転職のメリット、方法まで解説」
「プロジェクトの流れ」